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独白するユニバーサル横メルカトル 平山夢明短編集

独白するユニバーサル横メルカトル 平山夢明 短編集

著者:平山夢明 光文社

Amazonで検索しましたが、商品情報出ませんでした。
以前使っていたブログにも読書記録が少しあったので、そちらを閉鎖する前に移そうと思います。
この読書感想は2007年の記録です。


<感想>

題名だけだと「何なんだ?」と思われる本である。
しかし、内容も「だから何なんだ~!!」と叫びたくなる事、必至である(笑)

ホラーアンソロジー「異形コレクション」でもお馴染みになりつつある作家なのですが、実はすでに十年以上前にこの作家の本を読んでいました。
ノンフィクションに分類される「異常快楽殺人」がそれです。
現実に存在した殺人鬼たちを書いた本で、ある意味この本が私がこっちに興味を覚えるきっかけとなったのかもしれません。

今回の短編集は異形コレクションで掲載されたものもあれば、他の雑誌や企画などで執筆されたものもありました。
アマゾンかヤフーで既読者のレビューを読んでこの本の発刊を知り、とりあえず読んでみようと、図書館で借りてみたのですが………これは思いっきり好き嫌いが分かれる作品ですわ(笑)
もともと「ホラー」ってどこに恐怖を持ってくるかでかなり変わりますからねぇ。

ちなみに私は気に入りました(笑)
以下は収録作品の感想です。


C10H14N2(ニコチン)と少年――乞食と老婆 水木しげる監修「妖かしの宴3 御伽草子」初出
「御伽草子」がテーマなのだろうか、文章がそれっぽく書かれています。
問題は少年と乞食が登場するのですが、ニコチンと老婆はどこに関係しているのか…という実に単純な疑問が出てきた事でしょうか。
どうでもいいんですがね(笑)
淡々と綴られる主人公「たろう」の物語なのですが、とにかくサバサバした文章にどぎつい内容のミスマッチさが薄気味悪い世界を演出しています。
きれいな水が徐々に毒に冒されていくような感じですね。
でも人間の中にある「優しさに隠れた残酷さ」が妙にひしひしと伝わってきました。
そうなんです。
人間は「戦争反対。いじめは最低だ」と言いながら、嫌いな人間に対しては徹底的に嫌がらせをする生き物なのです。そして、それを指摘されれば「だってその人が悪いじゃん。私は間違っていない」と当然のように言い切る生き物なのです。
……過去の嫌な記憶が甦った作品でした。



Ω(オメガ)の聖餐 井上雅彦監修「異形コレクション 世紀末大サーカス」初出
はっきり言ってグロイ。
何がグロイって問われれば、内容そのものから腐臭が漂うと答えます。
テーマが「サーカス」だけではなく「世紀末」が付くのだから、サーカスの現実とは違う妖しさが加わり、さらに世紀末から終末思想を連想させるところがこの「破滅主義」的な結末を生んだのか。
一種のフリークショーを見ているような錯覚を覚えます。
一応の注意事項として食前には読まない方が無難な作品かな。



無垢の祈り 「問題小説 1999年3月号」初出
いじめに関して言えば、周囲の人間すべてが敵に回ったような絶望を感じるとしか言いようがありません。
主人公の少女が助けを求めたのが、父や母でもなく、先生でもなく、友人でもなく、警察などの社会でもなく、姿を隠した殺人鬼だったのは少女の中に巣食った絶望のせいなのかも。
人を残酷な方法で殺している殺人鬼よりも、少女に冷たい仕打ちを与える親や友人の方がはるかに残酷で怖い存在だと思わせるような話でした。
よくある話と言われればそれまでだけどさ。


オペラントの肖像 井上雅彦監修「異形コレクション アート偏愛」初出
世界観が面白かった。
かつてイタリアでサヴォナローラだったかな、実在した僧侶が打ち出した政策がそのまま実現した近未来の話です。すなわち、「芸術(アート)は人を堕落させる」…。
サヴォナローラは一般市民が持っていた「実利にならない」絵画や彫像、装飾品などを取り上げて焼き払ったと言います。
最初は彼の清貧さを支持していた民衆はやがて彼のやり方に反発し、結局サヴォナローラは失脚する訳ですが…この世界では「芸術」は徹底して否定されていますね。
主人公の純粋な思いが結局、自身を破滅させる結果となるのですが、最後の一文がものすごく重い…。怖いというより悲しい話でした。


卵男(エッグマン) 井上雅彦監修「異形コレクション ロボットの夜」初出
この作品を読む前に、殺人鬼ハンニバル・レクター博士の登場する有名な映画「羊たちの沈黙」を見ていない人は見ましょう(笑)
絶対にその方がこの作品は面白くなります。
レビューで「<羊たちの沈黙>のパクリじゃん」と書いてあったのですが、それは筋違いというもの。作者は意図して「羊たちの沈黙」を真似たんですって。
だからこそ、最後のどんでん返しが面白いんじゃないかな。
私は素直に騙されました(笑)


すさまじき熱帯 「小説宝石 2003年6月号」初出
何が言いたいのか分からないぞ~と叫びたくなった作品。とにかくこれもグロイ話だった。こちらは作品から死臭腐臭が漂ってきます。
ただ、登場する「ドブロク」というキャラクターに声を当てるなら、ぜひ玄田哲章氏にやっていただきたいと思った。いい年した中年オヤジが「ダーリン~♪」っていきなりオカマになるシーンがインパクト強かったから(笑)


独白するユニバーサル横メルカトル 井上雅彦監修「異形コレクション 魔地図」初出
表題作ですが、この作品は「第59回日本推理作家協会賞」を受賞したそうです。
「ユニバーサル横メルカトル」という単語を見た時、さっぱり分からなかったんですが要は「地図の種類」なんですよね。
テーマが「魔地図」なので、この「ユニバーサル横メルカトル」さんが主人公なんですよ……ええ、地図が主人公です(笑)
素直に面白いと思った作品です。まさかこんな形で「地図」を捉えるとは思ってもみませんでした。
私は全く地図が読めない女なので、この主人公には嫌われるかもしれません…でも、性格が非常に紳士で真面目なので「仕方がないな」と思いつつも、面倒見てくれるかも。


怪物のような顔(フェース)の女と溶けた時計のような頭(おつむ)の男 井上雅彦監修「異形コレクション 夢魔」初出
一番難解な作品でした。
世界観がいまひとつ掴み切れなかった……近未来なのか現代なのかすら分からなかった。
主人公の男が従事している職務も一応は分かるんだけれども…前述の「オペラント」のように「どうしてそんな職務が必要なのか」という理由がなかったので、微妙に把握し切れない。
拷問描写が延々と続くので、暴力シーンが苦手な人は要注意かな。
ただ、この後「異形コレクション 蒐集家(コレクター)」で似たような作品があるんですよ…この作品で拷問が満足に書けなかったから、改めて気合い入れて書いたなんて言うんじゃなかろうか(笑)

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こぶた貯金箱

Author:こぶた貯金箱
知識は浅く広くがモットーですが、好きなモノにはのめり込むタイプです。
ほとんどが図書館で出会いますが、過去に衝動的に手に入れた本なども紹介していきます。かなりマニアックなもののありますよ。

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